「第三の開国」
「バスに乗り遅れるな」
「世界の潮流」
お笑いのようなお題目が彼らの口から漏れる。
TPP、遅れれば条件不利に…枝野経産相
(2011年10月16日19時47分 読売新聞)
枝野経済産業相は16日、NHKの番組に出演し、政府内で検討が進む環太平洋経済連携協定(TPP)について「世界の流れから遅れてしまうと、結果的に日本により不利な条件が押しつけられる」と述べ、早期の交渉参加が必要だとの考えを示した。
(ロイター 10月20日)
10月20日、野田首相はNHKの番組で、TPP交渉参加問題について「一定の時期に結論は出さないといけない。完全にルールが決まってから入るとハードルが高くなる可能性がある」と早期結論の重要性を強調した。
不利な条件が押しつけられれば、参加しなければいいだけの話である。
参加反対の中心が農業部門にあるとみたのか、こんなことを打ち出してきた。
水田規模10倍で競争力強化 農業再生基本方針 (asahi.com 2011年10月25日)
基本方針には、国際競争力の弱い水田農業の規模を平地でいまの10倍程度の20~30ヘクタールに広げるほか、1次産品の生産・加工・流通を一体的に手がけて付加価値を高める取り組みなどの体質強化策を盛り込んだ。
前原もこんなことを言っていた。
「日本の国内総生産(GDP)における第1次産業の割合は1.5%だ。1.5%を守るために98.5%のかなりの部分が犠牲になっているのではないか」
前原には言わせれば、98.5%のGDPのために1.5%を犠牲にするのは当たり前ということなのだろう。
野田や前原たちはそこに人々の暮らしを見ることはない。
20~30ヘクタールに広げる?
当然そこから漏れる人たちが出てくる。
たとえば棚田。

機械化は難しいし、集約するのも難しい。
外国との競争だけでなく、国内での大規模農家、農業企業との競争からも取り残されていく。
程度の差こそあれ、このような農地はいくらでもある。
このような農地はやがて放棄され国土の荒廃につながっていくだろう。
美しい風景を守れ、というのではない。
ことは生き方の問題にかかわる。
このようにして生きてきた人々の、その生き方を簡単に否定する、そのことにわたしは怒りを覚える。
人間や国土の価値をGDPや数字でしか捉えられないその発想に腹を立てているのである。
しかも、その数字さえもまやかしばかりではないか。
2011年7月現在、TPPにはシンガポール、ニュージーランド、ブルネイ、チリ、米国、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアの9カ国が交渉に参加している。
交渉に参加している9カ国中にアメリカの占めるGDP割合はほぼ85%である。
ほかの8カ国のGDP総計はアメリカの7分の1である。
貿易額などたかがしれたものである。
アメリカにとって大した意味は持たないはずである。
しかし、ここに日本が加われば話はガラッと変わる。
日本のGDPは、他の8カ国合計のほぼ2倍半である。
アメリカにしてみれば、小口の客に多少サービスしても、金持ちのカモを一人引っかければ大もうけである。
元々は田舎の乗り合いバス。
金持ちのアメリカ人が乗り込んできたと思ったら運転席を占拠。
アホなお大尽が乗り込んでくるのを待っている。
さてそのお大尽、”環太平洋戦略的経済連携ナンタラ”というご大層な名前にコロリ。
慌ててバスに飛び乗ったがお客はガラガラ。
運転手のアメリカ人がニタニタ笑っている。
降りようと思っても簡単には降ろしてくれない。
”自由貿易”とは金持ちに都合のいい理屈である。
それはイギリスの植民地支配にとっては確かに便利なものだった。
しかし自由貿易が正当性を持つのは、双方の国力が均衡し、しかも双方が善意で行動する場合である。
いまだに自由貿易論の教科書扱いされているリカードの比較生産費説・自由貿易論はこの前提条件を無視している。
この前提条件が満たされない限り、ドイツの経済学者リストの保護貿易論はそれなりの正当性を持つことになる。
戦後、世界で最も保護貿易の恩恵を受けてきたのは日本であろう。
日本は保護貿易によって産業育成・農業保護を両立させてきた。
戦後農政がまるでデタラメであったにもかかわらず、曲がりなりにここまで生き延びてきたのは保護貿易のお陰である。
今、日本は自らアメリカの餌食になろうとしている。
保護貿易のお陰でで成長してきた産業界が、身の程もわきまえず強者として振る舞おうとしている。
自動車が国を支えている。
機械・化学・電子産業が国を支えている。
農林漁業など足手まといなだけである。
根底にあるのは、前原の傲慢と同じものである。
交渉分野は24に及ぶ。
おそらくどの大臣の所管にも関係する。
「バスに乗り遅れるな」理論で、アホ揃いの大臣たちが国会を乗り切れるのか?
「乗数効果」が答えられずに立ち往生した菅直人の二の舞、三の舞が続出することは間違いない。
TPPという意外な問題が民主党政権の崩壊につながりそうだ。
いよいよ民主党を解体すべきときがやってきたのだ。
小沢一郎でもこの政党はもうどうにもならない。
小沢一郎に期待することは、もう一度小沢新党を立ち上げることだけである。
小沢一郎よ、民主党への未練を捨てよ!
民主主義の確立のために!

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